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分担研究概要

医療福祉用センサシステムの創製に関する研究

田中 真美
医工学研究科 医工学専攻 社会医工学講座
医療福祉工学研究分野 教授
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  医療福祉用の新しいセンサシステムの創製に関する研究開発を行っており、特に機能性材料を活用した以下のテーマを遂行中である。

1. 触診用アクティブセンサシステムの開発

  触診は医療現場では一般的に用いられているが、診断結果は医師の経験に大きく影響し、客観的な評価方法の確立が切に望まれている。本研究では医師の触診の代替の実現を目指し、触覚感覚受容器の応答と類似した応答を示す高分子圧電材料を受感材として用いた触診用アクティブセンサシステムの開発を行っている。

(1)皮膚性状計測用センサシステムの開発
  図1は皮膚性状計測用センサシステムであり、センサ出力は皮膚表面上を指に装着したセンサが軽く走査されることにより得られる。図2は出力結果の一例であり、アトピー性皮膚炎と健常者の肌の測定結果である。皮膚性状により出力が異なることが分かる。このような、自明な皮膚性状の違いだけでなく、人間の触診や視診では判別できないような状態についても診断可能とするセンサシステムの開発を行う。

Fig.1  Haptic finger for monitoring skin conditions

Fig.2 Sensor output and power spectrum.
(Left) Atopic dermatitis (Right) Normal healthy skin

(2)早期前立腺癌診断用触診プローブの開発
  前立腺癌および肥大症の診断は,医師の示指を肛門より挿入して行う直腸内触診法に,超音波探触子を用いた超音波断層法を併用して行うのが一般的である.しかしながら触診は曖昧な人間の指感覚に依存し診断の結果が医師の経験に大 きく影響されるため,客観的な評価方法の確立が求められている.本研究では,人間の示指に代わり柔らかさを判別できる触診センサの開発を行っている.具体的には高分子圧電フィルムを他の柔軟材と組み合わせ生体のしこりと硬さを同時に計測する前立腺触診センサの開発を行っている.本センサは前立腺癌と前立腺肥大症の識別率を高め,前立腺癌の早期発見を容易にするものであり,高齢化社会の健康増進に貢献する.

2. 点字読み取り用装置

  高齢化により糖尿病患者は増えており、同時に後天性の中途失明者の数も増えている。点字は視覚障害者のために開発された文字であり、触読することが可能である。しかしながら点字の学習は困難であり、特に後天性の視覚障害者の識字率は著しく低いことが報告されている。以上に鑑み本研究は何時でも誰でも簡単に使用可能な点字読み取り装置を開発するものである。 具体的には高分子圧電材料を受感材として各文字の出力の差異が明らかに得られるような最適センサ構造の検討,また 各文字の認識のための信号処理やアルゴリズ法などこれらの検討を行っており,センサシステムとしての完成を目指している.図5は開発中のセンサおよびセンサ出力であり、各文字に対するセンサ出力が異なっていることが分かる。目標としてはセンサを指に装着し点字列を擦るだけで各文字を読み上げ判読可能とする装置の実現を目指している。

Fig.3 Sensor part of Braille letter reading apparatus and sensor output.

3. 触覚感性計測および触動作調査に関する研究

  触感は人間の生活において必要不可欠な感覚であり我々は色々なものに触れ,これらを通して生活している.特に指先は単にものに触れるという動作だけでなく,撫でる触る等の触動作を行うことによって質感や手触り感などの触感を収集している.触感によって判断される対象物として布が上げられるが、布の特徴はヒトの触感によって職業熟練者の用いる「腰がある」「なめらかな」等のような慣用的な「風合い」形容語で表現、評価される。このような手触り感の微妙な違いを計測するシステムおよび定量化技術の確立が望まれている。本研究はヒトの触感の調査および解析、触覚センサ、動作機構および信号処理法について検討し触覚感性計測の実現を目指す。

  図4は布の触感計測用センサであり、スライダに装着し微小力を制御しながら布表面を走査させ布からの接触に関する圧電信号を得ることが出来る。また、図5はヒトの毛髪を模して作成した触感測定パネルの一例である。パネルはポリイミド製の基板であり、エキシマレーザー加工により、表面の高さと幅を数マイクロメータオーダーで変更している。このサンプルを用いてヒトの手による触感感性の調査およびそれを計測可能とするセンサシステムの開発を行っている。

Fig.4 Sensor for measuring human touch sensation.


Fig.5 Panel surface for measuring human touch sensation.
Panel 1 Width 10μm, Height 1μm
Panel 2 Width 30μm, Height 1μm
Panel 3 Width 30μm, Height 5μm
Panel 4 Width 10〜30μm, Height 1〜3μm (Random)

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